松田卓也氏著「間違いだらけの物理学」書解説

反相対論バッシングの松田卓也氏の新刊「間違いだらけの物理学」が出版されました。相対論の雲行きが怪しくなってきたからか、今度は一般物理の疑似科学本を出してしまいました。遠心力や潮汐力の都市伝説を一刀両断だそうですが、助教授になっても見かけの力を理解できなかった著者ならではの、座標系や物理学の誤概念が満載です。

これから物理を学ぶ学生には誤った解説を鵜呑みにしないよう、誤りやおかしな個所を指摘をしておきたいと思います。もっともこの本の一番の誤りは、読者に考える隙を与えていないところです。一方的な解釈や法則の詰め込みで、著者の解説のみが唯一確立された学説のような語り口になっています。物理学ならではの観察力や理論的なものの考え方は、すべてプライドの高い専門家の「都合」で斬り捨てられてしまいます。

著者の松田氏にはすでに誤りの指摘と質問をしていますが、「デモデモ、ダッテダッテ」と、どうも要領を得ません。おそらく誤りを認めるのはプライドが許さないのでしょう。

ここであげる項目は、目から鱗と絶賛する前に様々な角度からじっくり検証したほうがいいと思われるものです。相対論の専門家の主張は鵜呑みにせず、まずは自分で考えてみる習慣が大切だということです。


・・・その後、松田氏は書籍と全く同じ誤りで構成されている論文を送ってきました。当たり前ですが同じ著者の論文など回答の根拠にもならないので、もう少し丁寧に誤りを指摘することになりました。しかし、あくまで自説が正しいの一点張りで、予想どおり、新規性があるので科学誌に投稿するよう勧めてきました。

ネットや書籍で一般人を批判し、反論されるとと論文を出すよう要請する松田氏の作法は、昔も今も変わりません。一般読者に購入していただく書籍の誤りを指摘され、平気でとぼけ通せるのは真の疑似科学者だけでしょう。回答に応じない物理学者が物理学を語るようでは、疑似科学は根絶できないと思うのですが・・・。

「間違いだらけの物理学」 の誤りと懐疑点

本文全体で数十項目以上の誤りとあやしい内容があるため、できるなら書籍を購入して書き込みながら確認するといいでしょう。特に簡単に検証できるティーカップの実験は是非、実際に実験してみてください。すぐに真偽がわかります。
内容は断定的ですがヒントだと思ってください。更新や証明は不定期です。あしからず。



○本文全体の間違い!!

×用語-1(全体)
「引力」と「重力」を同義で使用

引力と遠心力の合力が重力という一般的な定義を使わなければ誤解が生じる。
物理学の特定分野では引力と重力を同義で扱うとしても、遠心力の有無を議論した文章で同義で扱うことにより矛盾が生じる。誤解を招かないよう一般的な定義に統一するべき。

×用語-2(P069、全体)
「見かけの力に対して「真の力」というものがあります」

見かけの力に対する物理用語は存在しない
見かけの力というのは観測系の違いで生じるために、これに対する物理用語があるとすれば、観測系に依存しない表記法が確立されている必要がある。つまり絶対基準系を想定した表記を求められる。「真の力」を主張するには相対論の考え方を破棄することになる。

×用語-3(P069)
「速さ」はスピードで、「速度」はベロシティといいます。・・・「速度」というときは「どちら向きに時速○キロ」と指定したものをいいます

「速さ」と「速度」の解説と本文が矛盾している。
物理学の特定分野の「速さ」と「速度」を厳密に区別する習慣を一般に拡張したのなら、混乱を避けるため定義とともに寛容に対応可能と説明するべき。物理学でも「どちら向きに時速○キロ」と表現するときは「速度」とは別にベクトルを追記するだけで問題ない。本文7章でも「速さ」と「速度」は区別されていない。



○1章・世にはびこる物理学は間違いだらけ の間違い!!

×世に-1(P021)
「私は長年に渡って、特殊相対性理論に関するパラドックスの・・・某大学の教授や名誉教授に、何度口を酸っぱくして説明しても理解されないのです」

著者の相対論の説明が矛盾しているから



○2章・「太陽にゴミを捨てられる」は間違い! の間違い!!

×太陽-1(P027から)
「人口衛星を地球すれすれに回る円軌道に乗せる・・・」

ロケットを水平に打出す必然性がない
単純にロケットを垂直に打出せば宇宙速度は関係ない。「そのままでは地球の地殻をふらふらしているだけ」になるのは衛星軌道に乗せようとしているから。重力圏を出るころに公転半径より内側で地球より後方に飛び出すような位置とタイミングで打出せば、太陽の回りをまわり続けるための速度が確保できなくなり、しだいに「らせん状に」落下することになる。余った燃料や太陽エネルギーで軌道修正するなど可能性はある。
ケプラーの法則を適用するから惑星軌道をとらざるを得なくなる。

×太陽-2(P028)
「さてロケットが太陽に落ちるということは、・・・ちなみに遠日点は地球の軌道上にあります」

落ちるなら惑星でないため遠日点が存在しない
軌道修正で遠日点が変化するが、遠日点が地球の軌道上にあると想定したことで惑星と同じ軌道に戻される。

×太陽-3(P029)
「太陽に落ちるとは、太陽を目指して一直線に進む軌道に入ることと考えてもよいでしょう」

一直線に進む必然性がない
一直線の軌道に入るなら、その手前では確実に一直線ではなかったことになる。どの段階で一直線になるかを限定していないために、難易度の参考にならない。

×太陽-4(P030)
「地球を出るのに秒速約10キロメートル、太陽に落ちるのに秒速30キロメートル、合わせて秒速40キロメートルが必要

水平に打ち上げなければ秒速1キロメートルでも可能
秒速40キロメートルを出す困難さは、本題の困難さには直結しない。太陽-2で指摘したように、地球の公転軌道より内側でなおかつ地球より速度が遅いなら、周回軌道には戻れなくなり落下の一途をたどる。

×太陽-5(P034)
「これらの問題を考えるにはケプラーの法則が必要です」

落下させるのだから、ケプラーの法則が適用できない低速を考えればいい。
落下する人口衛星や隕石のように、減速したゴミならケプラーの法則を適用できなくなる。ケプラーの法則を使うという先入観のために、必要以上に速度を高速に設定している。

×太陽-6(P034)
「第一法則は面積速度一定の法則とも呼ばれます。・・・軌道が直線でも成り立ちます。・・・原点に星があるとします。・・・星の重力が無視できる場合、質点は等速直線運動をします角形の底辺×高さが一定になります。これが面積速度一定の法則です

直線軌道ではケプラーの法則は適用外
これは相対論ではよく見かける、設定を変えて適用範囲を拡張してしまう手法。まるでケプラーの法則が三角形の面積の公式を支えているような説明になっている。「星の重力が無視できる場合」「等速直線運動」が条件なら、焦点に質量が存在しないために惑星の条件から外れる。単純に三角形の面積を求める図形で面積を求めているにすぎない。
このような論法を学生が真似しないよう対応が必要。

×太陽-7(P038)
「楕円軌道が非常に細くなった極限が放物線軌道です」

楕円軌道が非常に細くなった極限は直線軌道。
楕円軌道は閉じているが、放物線軌道は開いている。楕円軌道を細くなっても周期が残る。

×太陽-8(P038)
さらにひしゃげると双曲線になります」

極限までひしゃげたらそれ以上はひしゃげない
楕円軌道は閉じているが、双曲線は開いている。ひしゃげるという意味が自由変形ならすべての図形が該当してしまう。

×太陽-9(P038)
らせん状のの軌道など存在しません

ケプラーの法則を適用しなければらせん状の落下軌道に移行する。

×太陽-10(P038)
「発電衛星がだんだんエネルギーを失い・・・」

周回軌道を回っているのは慣性力。落下と同時に相対的な位置エネルギーが運動エネルギーに変換されるがエネルギーを失うわけではない。

×太陽-11(P039)
「発電衛星が宇宙船に激突すれば、もともとの楕円軌道とはちがう楕円軌道で公転し続けます」

激突で加速するか減速するかで結果は変わる
激突したものが公転し続けるなら、激突による人口衛星の落下はあり得ないことになる。

×太陽-12(P039)
「太陽に向かって、・・・太陽質量の
1/10倍 300m x3=1km
1倍 3km x3=10km
10倍 30km x3=30km

質量と距離の関係が等比数列になっているので相対論と矛盾
質量を基準にそれぞれ3倍した距離が同じメートル法で測れるのはニュートン力学。P039「近い空間では一般相対性理論の効果が顕著になる」という記述と矛盾する。



○3章・遠心力の間違い! の間違い!!

×遠心力-1(全体)
「遠心力は慣性系になく、回転系にある」

遠心力は観測系から見た回転系上に働いているように見える見かけの力。
物理学の特定分野では「遠心力は慣性系になく、回転系にある」という慣例や解説もあるが、見かけの力は観測系の違いで生じる表記の違いにすぎない。観測系の設定によって変化してしまう力を慣性系や回転系を基準に判断するところから検証するべき。
遠心力を求めるには必ず観測系から見た回転系のデータが必要になる。回転系上に遠心力が働いている様子を観測系から見ているという認識や用法で問題はない。

×遠心力-2(P042)
「鉄球に働く力の和がゼロだとすれば・・・等速直線運動になるはず」

力が働いていないなら静止し続ける。
この章(書籍)の根本的な議論の誤りは、観測系を変えていることに気づいていないところ。回転系で力の和がゼロという判断をしたのだから、運動の様子も回転系の立場から記述しなければならない。
シュッツが慣性系から見て「回転運動をしているね?」と言っているのだから、回転運動を引き起こす力が慣性系にあると指摘したと解釈でき、回転系の立場で「遠心力」を持ち出した著者の用語の扱いを注意したとすれば、この後の話の辻褄が合う。

×遠心力-3(P042)
この状況では遠心力なんてないんだ。向心力だけがあるから円運動するのだ」

「この状況」が回転系なら著者の主張と矛盾
著者の主張と整合性を取るなら、シュッツの「この状況」は慣性系となる。しかし著者が回転系の話をしているのでシュッツも回転系の立場を「この状況」と言ったのなら、回転系に遠心力はないと指摘されたことになる。また、一章(P018)で著者の回転系の話に対してシュッツが「そこに遠心力なんてものは存在しないんだ」と指摘したことからも、シュッツは「遠心力」という用語が回転系では別の呼び方になると指摘しただけとも受け取れる。

×遠心力-4(全体)
著者とシュッツの「遠心力」の考えは同じ

シュッツとのやりとりが事実と異なっている可能性がある。
著者のwebページでも同じシュッツとの会話が掲載されているが、遠心力で振り回すのはボールとなっている。シュッツの「この状況」は慣性系となって、どちらかの内容が脚色されている。どちらもシュッツが慣性系の話をしているが、著者の答が回転系になっていることから話の辻褄が合わなくなっている。本書を執筆した時点でもこの点に気付いていないようなので、シュッツの主張や会話の内容が全く異なっている可能性が大きい。

×遠心力-5(P047)
「アリは鉄球にしっかりつかまっていないと、遠心力で吹き飛ばされて、等速直線運動するのさ」

シュッツが遠心力があると言っているのは慣性系
鉄球の回転系から見て、飛ばされたアリはらせん運動になる。シュッツが遠心力があると言っているのは飛ばされたアリが等速直線運動に見えるの系の立場から。つまり、シュッツは慣性系から回転系に遠心力が働いていると指摘しているが、著者は回転系では飛ばされたアリが等速直線運動に見えると誤解している。



○4章・「潮汐力の説明」の間違い! の間違い!!

×潮汐力-1(P083、P086、P091)
海水の高さは月の引力により一定の周期で上下します。・・・
潮汐力の原因は、・・・月の重力の強さが地球上で・・・場所により異なることです。・・・
月の引力と遠心力の合力が潮汐力なので・・・。

○月と地球の引力と遠心力の合力が潮汐力という主張と矛盾している。
共通重心の周りの遠心力について説明を始めているので、地球の引力が出てこないのは誤り。また「場所により異なる」というのは地球の回転系に質点を置いた場合であり、思考実験のテスト粒子のある系とは異っている。

×潮汐力-2(P087、P090、P098)
図3と図4で「月の重力」は、図11では「月の引力

図11の「月の引力」が正しいようだが、「地球の引力」が抜けている
共通重心の周りの遠心力について説明を始めているので、ここでも地球の引力が出てこないのは誤り。

×潮汐力-3(P089あたりから)
潮汐力の説明で地球の自転を無視

説明では地球の自転を利用してる。
一般に地球の自転を考慮した潮汐力の説明もあり、自転を無視できる正当な根拠が必要。遠心力のベクトル分解の解説では、重力への取り込みのために地球の回転系への移動を必要としている。

×潮汐力-4(P089あたりから、図5)
「地球の中心(C点)では、月の重力と遠心力は釣り合います。・・・これが0でないと、回転系で見て地球は月にどんどん近づくか遠ざかります」

C点で釣り合っているのは、月と地球のそれぞれの引力と遠心力
共通重心の周りで円を描いている地球の中心で力が「釣り合っている」状態と見るためには、共通の重心が定まっていなければならない。この位置は地球と月の質量と距離が関係している。C点で月の重力と遠心力だけが釣り合っている状態なら、地球が月の周りを回っていることになる。

×潮汐力-5(P091あたりから)
「遠心力は月に近い地点と遠い地点では同じ大きさにならないと困ります。この矛盾を解決しようというのが、本章の話なのです」

説明図が正しくなるように解釈を探る手法は目的を見失う
潮汐力の解説の真偽が章のテーマになっているので、既存の図を正当化する理屈を考えるのは本末転倒。本来なら遠心力の違いを見出し、共通部分を省略した図を示すはずが、共通になるような成分のみを拾い出している。

×潮汐力-6(P091あたりから)
回転面上の地球表面の任意の点Aを考えましょう」

ここから実在しない仮想質点での考察になっている。
地球の自転に影響されない任意の点を仮想質点として解説を始めているため、潮汐力との関連性が途絶えている。解説は地表を時速1600q以上で移動しつづける実在しない質点でしか成されていない。なぜ潮汐力が仮想的な質点で説明できるかについての考察が全くない。

×潮汐力-7(P091あたりから)
A点での遠心力=rxω^2

A点での遠心力=質量xrxω^2 が正しい
特定分野で質量を省略する慣例があるが、「遠心力は・・・公式であらわすならば」と言っているので、一般的な遠心力の定義、回転中心からの「質量」x距離x回転角度の2乗を採用するべき。(この指摘に対してのみ、重版時に加筆修正する旨回答あり)

×潮汐力-8(P092あたりから)
遠心力をベクトル分解した一成分で力を比較できる

力を分解した一成分で比較することはできない
さまざまな大きさの力を2つの力に分解するとき、そのうち1つの力を共通に設定し、もう一方の力を同じ大きさに設定することは比較的容易にできる。共通でない方の力を考察から除外して、力を比較する手法は物理学に反する。

×潮汐力-9(P093あたりから)
「ベクトルのCA部分は地球中心から外を向いています。・・・CAの力は地球重力に「組み込む」ことができます

CAは共通の回転系、地球重力は地球の回転系にあるために、座標変換しなければ組み込めない
地球重力を考える視点が地球の回転系に移動しているために、CAと共通の座標に変換する変換が抜けている。共通の回転系から見た重力はらせんを描き、逆にCAを地球の回転系から見るとらせん状に見える。無意識に座標系を移動している。
また、地球表面上に点Aを置いている理由は、真円の地球表面での共通の遠心力を見るためだけであり、潮汐現象を起こした楕円上の点について遠心力の関与を想定するなら、CAは変化してしまう。重力に組み込めると仮定すると割合を変化させるか差分を発生させるしかないが、どちらも図3の遠心力とは同じにならない。

×潮汐力-10(P094あたりから、図3,5,6,7,8,9,10)
「CAの力は地球重力に比べれば・・・100万分の3程度です」

GCがCAと同程度だとすると、各図の遠心力は図示できないほど微小になる
GAを分解したCAがわずかであると主張すると同時に、GCやGAも相対的に縮小しなければならなくなる。つまり、解説に使った図3から図11の遠心力の一成分GC、だけでなくGAが100万倍大きく表現されていることになる。これらの縮尺を解決すると図による一連の解説は成立しなくなる。

×潮汐力-11(P094あたりから)
「共通重心の・・・潮汐力に寄与する部分GCと寄与しないCAに分けます」

各点の共通成分であるGCは潮汐力に寄与しない
同じ大きさ同じベクトルのGCが各点に潮汐力の差異を発生させているとの判断は誤り。すべての点に同じ力が働いているなら、潮汐力の差異は別の力によって発生していると判断せざるを得ない。

×潮汐力-12(P094あたりから)
「教科書や解説書によくある・・・そこでいう「遠心力」というのは、以上のような操作を経てのことです。厳密には「遠心力の一部の成分」と呼ぶのがいいでしょう。・・・私の調べた限り、共通重心から生じる遠心力を考えて、この図に至る図を描いた人は知りません

従来の図で著者の解説は誰も支持していないと主張している。
教科書や解説書の遠心力を使った著者の説は、結局、誰も採用していないという事実から、従来の図の「遠心力」は違った意味で使われていると考えるのが妥当。特に「力の一部の成分」だけで力を評価する手法が慣例になっているのなら、物理学は既に崩壊している。

×潮汐力-13(P099あたりから)
「ですから、本当は潮汐力に遠心力は関係ないのです」

物理学の証明や解説がこじつけと同じレベルだと誤解されかねない展開。
潮汐力を遠心力で解説するのが誤りなら、別の説を展開するのは物理学の手法として誤り。

×潮汐力-14(P099あたりから、図12)
「いま地球上の鉛直面内に円形に配置したたがいに独立の質点の一群を考えましょう。・・・元の円は落下しながら、上下に延び、かつ左右に押し縮められます。・・・これこそが潮汐力の効果なのです」

これは相対論でよく見かけるサンプルの取り方のトリックの一つ。
特定の効果を恣意的に示す方法として、都合のよいサンプルのみを選択して実験する手法がある。物理学では不正な手法として注意が必要だが、相対論では慣例的に使われる。
この思考実験の場合、円形に質点を配置することで地球全体の潮汐現象を連想させるが、そもそも円形に配置する必然性がない。潮汐力を説明するなら、海水と同様に地球のまわりにまんべんなく配置させればいい。各点は無数の群の一部にもなりえ、各点の合力は自由落下の効果を示す。結果的に地球の中心に向かう引力が図示されるのみ。

×潮汐力-15(P103)
「潮汐力の公式はずっと昔から数学者、物理学者の間で確立しているので、今にいたって変わるはずもありません

?????



○5章・「飛行機が飛ぶしくみ」の間違い! の間違い!!

×飛行機-1(P141)
「なぜ飛行機が飛ぶかについては、・・クッタ条件が満たされ、・・・」

クッタ条件では揚力のベクトルが証明できない
クッタ条件は揚力の条件にはなるが、どちらの方向に揚力が発生するかを決定するものではない。クッタ条件を満たしているから飛行機が飛ぶという結論なら、「飛行機が飛ぶしくみ」を説明したことにならない。



○6章・「曲がった川の内側の流れが遅いから蛇行する」は間違い!
      の間違い!!

川の蛇行をティーカップ問題で説明しようという考えは、アインシュタインの発想が根拠になっているようです。アインシュタインの考え方を後押しする気持が強かったのか、本質的な現象の観測も誤っています。

紅茶をかき混ぜて加速してからは等速運動を続ける前提で説明が展開されます。「減速」するときにどのような力が働くかを全く考察していないので、説明に困ったようです。著者と同じような説明はすでに流布されているようですが、ティーカップの底のわずか1mm以下のエクマン境界層が茶葉を集めるほどの流量があるという説明は、直観的におかしいと気づくのが物理学者ではないでしょうか?

簡単にできる実験なので観察すると、著者の説明とは全く違う現象を観測することになります。減速の始まったティ−カップの中では、抵抗のある外側から流速が弱まります。比重の重い茶葉は止まらずの流れの速い内側のコースで運動を持続しようとします。一旦は中心付近に向かい、その際に沈殿した他の茶葉にひっかかればそこで止まりますが、勢いが余っていると再び外側に飛び出し、またすぐに内側に引き戻されます。この繰り返しで結果的には茶葉が中心集まることになります。

結局、ティーカップの中心に茶葉が集まるのは
「減速するに従って、遠心力より向心力が勝るから」です。


×曲がった-1(P141)
「川の蛇行について・・・私はその問題を考えたこともありませんでした」

流体力学の専門家が川の蛇行について考察したこともないのは問題
主婦から質問を受けるまで川の蛇行について考察したことのない流体力学の研究者は、もともと物理に興味がないのではと資質が疑問視される。研究に関連性があるものを探しだす研究者でなければ、有益な研究成果を期待するのは無理

×曲がった-2(P147)
「水路の曲がり部の入り口では・・・教科書の記述は正しくない

曲がり部の「入り口」の流速について限定している教科書はない
川の蛇行を説明する際に、「入り口」に限定してしまうと蛇行ではなくなってしまう。流れ「全体」について正しい記述を「入り口」に限定して教科書の誤りを主張している。

×曲がった-3(P147)
数値シミュレーションをしてみました・・・再現された・・・ ・・・調査を開始しました・・・アインシュタインが・・・知りました

数値シミュレーションに「ティーカップ問題」を導入せずに再現に成功してる
実験で観測された現象をシミュレーションで再現できた後でアインシュタインの論文を知り、答の秘密を知ったとあるので、数値シミュレーションが偶然か辻褄合わせで実験を再現していたことになる。
川の蛇行を「ティーカップ問題」で解説するなら、同じ理論でシミュレーションに成功しているはず。ただし、辻褄合わせでは意味がない。

×曲がった-4(P148)
「するとなんと、あのアインシュタインが・・・回転流体の実験に、答えの秘密があったのです」

アインシュタインの説に合わせるように考察が偏っている
シミュレーションで再現できたにもかかわらず、アインシュタインの名前に惑わされて別の解説を展開している。

×曲がった-5(P150)
これは考えてみると不思議な現象です。・・・

ここから加速したまま減速しない「ティーカップ問題」が語られる
「ティーカップ問題」の解決は「減速」抜きでは語れないが、「減速」に伴う現象の考察がされていない。

×曲がった-6(P152)
「その当時・・・宇宙の研究ばかりするのは・・・具合が悪い・・・言い訳として、工学的な研究・・・

宇宙の研究には価値がなく言い訳で大学の研究をしたと認めている。
宇宙の研究に限らず、志の低い研究者が物理学を衰退させる。

×曲がった-7(P153)
ロシアの研究者は・・・私たちの論文を・・・バイブルだと・・・名誉なことです

悪用される危険を知りながら研究成果を公表するのは科学倫理の問題あり
自らの研究が殺人兵器に利用されても名誉だと感じる科学者がいるのかもしれない。

×曲がった-8(P154)
「カップの非粘性領域は鋼体回転をしています」

「ティーカップ問題」を鋼体回転で説明するのは誤り
紅茶の流れが減速する時点で、ティーカップの中は微分回転している。

×曲がった-9(P155)
「微分回転の微分と、数学で出てくる・・・微分は関係ありません

回転半径の変化に対して角速度が変化するという意味で、数学の微分と同じ意味合いをもつ
通常なら関連性のある用語をヒントに用語の理解を促すべき。無関係と断言してしまうと、理解するヒントを奪うことになる。

×曲がった-10(P156)
「カップの中の・・・スプーンで混ぜて。・・・その後お茶の葉をぱらぱらと・・・鋼体回転・・・」

浮力のある茶葉で紅茶の中の流れを観察するのは誤り
底に沈んだ茶葉が積み上がる条件を確かめるなら、はじめから中にある茶葉の動きを観察すればいい。浮力や表面張力が極端に異なる条件で液面を観測するのは誤り。カップの中のでは鋼体回転でなくが観測されるため、解説と合わなくなる。鋼体回転を主張するためにこの方法を提示しているとすれば科学とは言えない。

×曲がった-11(P156から)
「カップの中の・・・ともかく、カップの中の水は鋼体回転だということを覚えておいてください

鋼体回転ではな微分回転
ティーカップを撮影してスローモーションで再生すると、微分回転していることがよくわかる。基本的な観測ができていないことも問題だが、知識を優先させ観測を軽視させる記述は避けるべき。

×曲がった-12(P158 図2)
回転系の図に、流速や回転軸がある

回転系に流速の×や○はいらない。回転軸も不要。
回転系では流体が固定して見える立場。鋼体回転なら流速もない。





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