ただの足し算が比例関数に
まず、関数のチョットした勘違いで起こるトリックだよ。
ここにすごく簡単な式
f(A)=B
があったとするね。先頭についてる未知関数fには特定の演算で両辺を等しくする役割があること以外の詳しい情報が知らされていないとして、この式から関数fの演算を求めなさいと言われたらどうする? ただし、正解は1つしかないとするよ。
簡単じゃ。まず関数fを式に取り込んで式を組みなおしてみるのじゃ。
f×A=B
と書きなおせる。両辺をAで割って表現し直すと、
f=B/A
となる。このあとA、Bの値が判明したらこの式に代入すれば変換係数を導くことができるのじゃ。
じゃあ、A=100、B=1として、
f(100)=1
なら関数fはわかる?
もちろん、アインシュタイン先生の求められた式を応用すればいいだけだ。未知関数fを式に取り込んで等式に修正してみる。
f=B/A
から、A=1、B=100なら、
f=1/100
関数fは、Aを100分の1倍にする係数ということだ。
このfを変化させないで、B=10000の場合なら、Aはいくつ?
Bの100倍がAだから、
A=10000×100
A=1000000
結局Aは、1000000となる。
「ヒャクマン? スゴイ! さすが大学の先生ッ! スケールが違うねッ」と、言いたいところだけど、本当の答は10099。正解と約100倍の誤差があるよ。
関数fの演算は
f(x)=x+99
だったんだよ。与えられた数値に単純に
99を加えるだけの関数
で、xがどんなに大きくなっても99しか変化しない。それに比べて教授たちが求めた関数は、もとになる数値が大きくなるとそれに比例して答も大きくなる。たとえば、30万なんて数値を入れたら、99しか増えないところが3000万も増えちゃう。変化した量を比較すると、2970万/99で、30万倍の差が出る。結果的に大きな数値に応用するほど桁違いの間違いに成長するよ。
「何を言っておる! はじめから加法だとわかっていれば式を間違えることなどありえない! 相対論と同じ方法で係数を求めているので間違いのはずがない!」
たしかに物理学の世界で自然が前もって答を教えてくれるなら物理学者も楽でいいね。数学と違って答さえ出せればそれでOKというものじゃないから、どんな演算を使って自然を記述したらいいのか探るのが物理学の面白いところじゃない?
もともと未知の関数というのは、演算の種類がわからない状態のこと。だから、掛算、割算だけじゃなくて、足し算、引き算、もっといえば計算に頼らないできない法則のようなものまで答になる可能性がある。それを十分承知で理論を展開しないと。今回の正解のように足し算しか使っていない場合、
係数を求める手法を使ってしまうと、
正解の候補を自分から切り捨てたことになる
正解の候補を自分から切り捨てたことになる
相対論でいえば、ガリレイ変換を採用される個所を見つけられなくて、無理矢理、式全体に未知関数でくくって係数を求めちゃってるところ。光速度に近づくほど現実離れした答が出てきても、まさか捨て去ったガリレイ変換がピッタリ当てはまるところがあるなんて誰も想像できないよね。
このトリックの特徴は・・・
- 未知関数を定義したあと、系数扱いすることで発生する。
- 加法または減法の見落しで発生する。
- 間違いが比例的に増加する。
- 答を求めるのが不可能なケースでも、答が出せてしまう。
- 一度文字式に慣れているほど気がつかない。
- 分数の分母に入り込むと爆発的に暴走する。