有限な足し算が無限大へ
これは先ほどの関数の位置が右辺から左辺へと変わったことで、
さすが専門家だね。未知関数でもあっという間に答が出せるなんて。
未知関数Fがわかったところで次の問題だよ。
今の未知関数Fを使って、
関係ないパラメータを巻き込む
無関係な成分の取込み
次に紹介するのは、無関係な成分が関数に入り込むパターンだよ。
この式はもともと等式で、書かれていた関数を誤って消してしまったため不当式になってしまったとするよ。欠けている関数を補って等式に戻してみよう。この場合は左辺に未知関数Tを記入することで、等式にする。
この段階で数学的に関数Tを求めると、括弧の中を2倍にする係数として、
と結論づけてもよさそうだね。
ところがこの方法には重要な見落としがあるんだ。関数があらゆる変換を表せるという便利な点を利用して等式にするまではいいんだけど、実際に関数Tが何をどのように変換するかは不明のまま。
例えば、右辺の速度成分だけを2倍にする関数なのか、それとも左辺の速度成分を半分にする関数なのか、あるいは右辺全体の時間成分を半分にする関数なのか、・・・。そのパターンは無限に考えられる。もし、この問題の正解が、
のように、関数T
この問題には「欠けている関数を補って」とだけあり、どのような関数がどこに記入されていたのかという情報がないのでもともと回答不可能なんだ。関数Tは左辺の速度成分から秒速1kmを差し引く関数という以外は、何に依存して決定されるのかは未知の状態。物理学なら実験のデータ待ちということ。
これを左辺全体に影響を与えるような係数として扱うと、その値は式に含まれた距離、時間、速度の比率から算出される。つまり、もともと関数Tの決定要素が未知でも時空や両辺の相対速度等に依存する時間の係数が現れちゃう。
古典物理学で謎だった時間と空間の関係を、導出した裏には未知関数の意味を考察しないで式を展開してしまうというアインシュタインマジックと呼ばれる強行策が必要なんだ。少ない情報でも答を出してしまうのが相対論。誰も欠けている関数を補うなんて思いもしないから、未知の関数を付け加えてたら等式を完成させてサッサと展開を急ぐんだ。
そうなると、関数が式全体に影響を与えて、ただの古典物理学の式が時間と空間を取込んだ時空理論へと変化するよ。さらに同じようなことを別のパラメータで繰り返すこと、大統一理論や質量とエネルギーの等価性を発見なんて理論もできちゃう。本当は関数の展開方法を間違えて、いろんなパラメータを取込んでいるだけ。
関係ないパラメータを巻き込む
文字の使いまわしで世界中が矛盾だらけに
ここまで関数が抹消された式の変化を見てきたよ。それは相対論の式を説明するために絶対欠かせないもの。だけど、相対論で一番特徴的な性質を説明するにはまだ十分じゃない。なぜ相対論は数学的に間違っていないのに、パラドックスがいっぱい発生するの?
この質問に答えるために、もう1つの例を出そう。次の式も関数が抹消してあって、その関数を相対論と同じ方法で推理してみよう。
まずこの式から両辺に共通のCを消して、さらに単純な式にする。
未知関数Zを定義して等式に修正。
関数Zを係数として、答を出すと、
となる。未知関数Zは左辺と右辺の差を比較して修正している係数で、一見したところ数学的な間違いはないようだね。ところが、抹消されている関数はCだけに作用している関数だってことが判明したらどう? さっきCを消去したのは間違いということで式をたて直す。
Z(C)−Z(C)=2−1
0=1
この式が完全に間違ってるということはハッキリしてるけど、どこでトリックに騙されたかわかるかな?
ここで正解として抹消されていた関数を書き込んでみると、
となるんだ。もちろんこれ以外の答もありえる。
何が言いたいかって? 文字式には同じ文字が数個所に使われることがあり、その1文字にだけに関数が作用することもあるということ。それを知らずに、相対論のような展開をすると、特定の文字以外にも関数を定義してしまう。すると、関数に作用されない文字と関数を含んだ文字が同等に扱われて、数学上の矛盾が発生するんだ。
今回の例ではZと
この簡単なトリックのことを知らずに文字式だけで展開を進めると、裏では、いつのまにか0=1や1≠1
相対論のパラドックスはこんな単純な見落としで発生しているんだ。相当初期の段階で数学の枠から外れてるのに、数値計算をするまで矛盾が発見されないのは文字式に頼りすぎているからだよ。物理学を数学で表現するにはまだまだ未発見の落とし穴がいっぱいあるということかな。
数学理論が使えなくなる