科学偽ライターが日本を滅ぼす
大変残念なことですが、世の中には平気をウソつく人がいることは否定できません。相対論が「世界で数人しか理解できないほど難解な理論」と評価されていれば、必ず「理解した」ふりをし、疑似科学批判を展開することで相対的に理解度を誇示する人たちが現れます。
サイエンスライターの竹内薫氏は、そんな疑似科学批判によって人生を180度変えられてしまったそうです。相対論へのアンソロジーのつもりで書いた原稿が無断で疑似科学本に掲載されたことで、学会を追放され、執筆活動もままならない辛い時代を経験したというのです。
それでも氏は、親の敵より憎い疑似科学への批判を否定し、科学を愛する「正義の人」としてしNHK、民放でコメンテーターとしても活躍しています。未来の子供たちに科学倫理を教えようと、MIRAI小学校という教育機関(株式会社)を設立して校長に就任しています。
しかし、竹内薫氏の語るこのスキャンダルについては、多くの人が「作り話ではないか?」という疑念を抱いています。ウィキペディアやサイトで採りあげられ、本人の著書でも武勇伝のように繰り返し語られてはいるものの、少しずつ内容が変化し、しかもすべての情報が本人発信のみという点も疑惑が高まる一因となっています。
そこで真相を解明するべく、当時、『「相対論」はやはり間違っていた』の執筆に関わった共著者の一人として、竹内氏のスキャンダについて真相を明かそうと思います。
竹内薫氏の美談が虚偽であるなら、書籍の購入者や支援者、家族までも長年騙し続けていていたことになり、日本の将来を担う子供たちを教育する資格があるのか問われるでしょう。
関係者が加害者にならないよう、竹内薫氏に明確な説明を求めた方がいいでしょう。
なぜ「カ○○」はウソをつくのか
まず、竹内薫氏のみに降りかかったスキャンダルについてどのような文章があるかをみてみます。
Wikipedia より引用、抜粋
留学を終えて帰国した直後、有名な科学誌の編集者に紹介されて科学書の執筆に携わったところ編集サイドから幾度かの指摘を首を傾げつつ修正、その執筆した原稿が本人の確認もなく改竄、修正された上に相対性理論は間違っているという前提の疑似科学本に掲載されている事が出版後に判明したため狼狽、折り悪く「と学会」でトンデモ本として取り上げられてしまい疑似科学批判者から批判をうけ科学界から追放、放逐されたという。
基本的にWikipediaは誰でも編集できます。極端な話、虚偽の内容でも出典元になる出版物があれば堂々と掲載できてしまいます。これを利用して異なる意見、学派が日々削除や編集を繰り返しているのが現状で、Wikipediaに書いてあるから正しいという思い込みをしないよう注意が必要です。
【竹内薫の科学・時事放談】疑似科学 MSN産経ニュース より引用、抜粋
実は、かくいう私も疑似科学の被害に遭い、人生そのものを狂わされた一人である。海外での勉学を終え、帰国した直後に、有名科学誌の編集者の紹介により科学書の執筆に携わったところ、その本が疑似科学本であることが判明し、私は科学界から追放される憂き目を見た。
その後、十数年の歳月をかけて、コツコツと信用を取り戻してきたのである。狂信的ともいえる疑似科学叩(たた)きを経験した私は、今では、疑似科学の甘言とも疑似科学叩きの罵詈(ばり)雑言とも距離を置くようにしている。どちらも本来の「科学的な態度」とは程遠いと思うからである。
これは結構引用されている文ですが、感銘を受けて熱烈な支持者になる人もいれば、違和感を感じて懐疑的な見方をする人もいます。「科学界から追放」された具体例も示されず、漠然としたイメージから確固たる信念が形成されるまでの流れに無理があるように思います。
学説の99.9%が仮説と考える人物が疑似科学本を特定しているのも奇妙ですが、被害を与えたのが正科学界側であったにもかかわらず、疑似科学の被害に遭ったと訴えているあたりは、科学界に媚びを売っているようで共感は得られないでしょう。
科学嫌いが日本を滅ぼす 2011年 新潮社
個人的な疑似科学体験 より引用、抜粋・・・「疑似科学と私」について書いておきたい。疑似科学は、私にとって、親の仇ほど憎い存在だ(笑)。おそらく、私の人生は、疑似科学のせいで180度変わってしまった(他人の失敗談ほど面白いものはない。以下、あえて、そういった意地悪な視点から読み進めていただければ幸いである)。
・・・<中略>・・・
・・・そしてその人の部下にあたる編集者Iさんから、「相対性理論へのアンソロジー」への寄稿を求められた。私は原稿用紙で30枚ほどの「量子重力理論の現状」という解説記事を書いた。それは半分ほどに割愛され、ファックスでゲラが届き、そこに私が修正を入れて、本に掲載された。問題はその本の題名である。今でもあの時の光景をまざまざと思い出すことができる―『「相対論」はやはり間違っていた』。ご丁寧なことに私の名前は、「常識から相対性理論を考える会」の会員であるかのような体裁で掲載されていた。(もちろんそのような会に入った憶えはない)。
この本が出た後、昔のように茂木と呑みに行った際、「竹内、おまえ終わったな」と呟いたのが印象的だった。
このプチスキャンダルにより、私は科学者生命を断たれた。大学院を出たばかりで、早くも、私は、人生設計をやり直すはめになったのだ。
ところで、このときの編集者I氏とは、いまだに仕事をしている。物書き稼業で生きていくとなったら、I氏は、私の人生をメチャメチャした悪人ではなく、仕事仲間の一人とみなすべきだからだ。こういうのを開き直りというのかもしれない。
・・・<中略>・・・
・・・疑似科学が科学の観点から見て間違っているからといて、その行動を弾圧したり、言論を封じたりする行為はあまり奨励できないのだ。
・・・<中略>・・・
私は、あくまで科学の見方であり、「科学応援団」を自負しているが、それでも自由主義の日本という国において、いかな理由があるにせよ、科学者が「この本は出版すべきでない」と圧力をかけるのは賛成できない。それはヨーロッパ中世の魔女狩りと本質に変わらないように感じるからである。
・・・<中略>・・・
そのように考えるから、私は、「疑似科学狩り」に関与することはできないのだ。
ここでも悪いのは疑似科学であって、あくまで自分は被害者だと主張しています。著者が非科学的な行為を否定し続ける根本的理由を述べているように見えますが、竹内氏が「常識から相対性理論を考える会」の会議に出席していた事実を知っている当事者の立場からみると、平気で人を裏切ってしまう人のようです。事実が暴露された時のための保険として会員でなかったことを協調したのでしょう。
99.9%は黒い仮説
竹内薫氏が『「相対論」はやはり間違っていた』の出版時の出来事をスキャンダルとして語ったものは他にも複数存在していて、氏の文章をそのまま真に受けると、いろいろと混乱してきてしまいます。事実関係が矛盾していだけでなく、著者の主義主張と行動に一貫性が見られません。おそらく、本人でさえ納得のいく説明は不可能でしょう。
では何が真実なのか? 結論から先に言ってしまうと、
point
竹内薫氏の主張しているスキャンダルは99.9%捏造です。
執筆を要請してきたのは竹内薫氏本人だからです。
竹内薫氏が著書などで語っているスキャンダルの内容はまったくの作り話です。数人の著者が原稿を削除して誌面を提供したにもかかわらず、出版停止の騒ぎを起こした氏の問題行動を挙げます。
- 竹内薫氏が紹介されて執筆したのは「宇宙フラクタル構造の謎」
『「相対論」はやはり間違っていた』は途中参加のため先に出版された。
- 執筆を要請したのは竹内氏本人
「宇宙フラクタル構造の謎」の打ち合わせのために徳間書店を訪れ、編集者I氏の机上で『「相対論」はやはり間違っていた』のゲラを見つけて参加を要求。
- 竹内薫氏が参加要請した時点でページ数が変更できなかった
すでにページ数の変更ができない段階で、編集者I氏が無断で原稿を改竄してまで追加採用する理由はない。
- 竹内薫氏のために数名の共著者が原稿を削った
竹内薫氏を反相対論の同志だと勘違いした共著者数人が原稿の一部削除を快諾。再編集して竹内薫氏の論考のスペースを確保した。
- 『「相対論」はやはり間違っていた』の監修は竹内薫氏
相対論の専門家だと自称していため、監修を兼任していた。出版前に全員の論考を見ている。
- 『相対論を打ち砕くシルバーハンマー』の全文削除を迫った
「大物物理学者が激怒して出版差し止めを求めている。『相対論を打ち砕くシルバーハンマー』を削除しなければ国会でも取り上げられ、徳間はつぶれる。責任を取らされて解雇される。今すぐ鎌倉まで行って説明と謝罪をしてください。」と編集者のIさんが狼狽。行く筋合いではないので連絡先を聞くと大物物理学者とは竹内薫氏のことだった。
- 電話で竹内薫氏に直接連絡するも、論考の内容さえ理解していなかった
鎌倉に行って説明して欲しいというのは、編集者のIさんが出版するために勝手に頼んだのだと思っていたが、竹内薫氏は鎌倉ではなく「茅ケ崎に説明し来い」と言ったので、倫理観が完全にずれているという印象を持ったと同時に要求を拒否。電話で全文削除を要請した理由を聞いたが、論考で採用しているアインシュタインの論文の内容を間違えたので中断。今後、他人の出版に干渉しないことを竹内氏に確約させて電話を切る。
- 「相対論を打ち砕くシルバーハンマー」の誤り指摘と「編集部注」の下書きが届く
今後干渉しないと約束した竹内氏から編集部に、専門家から疑問点と編集部の注意書きの下書きが届き、これを掲載するように要請してきた。
竹内氏から編集部に送って来たFAX(書き込みは編集者のIさんによるもの)これで竹内氏の主張して来たスキャンダルがまったくのつくり話だとわかります。
- 全文削除を見越して、差し替えの原稿を用意していた
「相対論を打ち砕くシルバーハンマー」を全文削除して空いてしまう15ページを見越して竹内氏は15ページの追加原稿のを用意していた。氏の著書で原稿を半分に減らされたと語っているのは、勝手に書いてきた約30ページの原稿を拒否され、予定通り15ページに戻されたことを被害にあった書いている。これには編集者I氏も呆れる。
- 竹内薫氏の妨害に対処するため緊急会議
編集者I氏、共著者の窪田登司氏と3人で年末休みに入った徳間書店の編集部に集まり、竹内薫氏の指摘事項すべて勘違いを確認。同じ勘違いが寄せられないよう、「相対論を打ち砕くシルバーハンマー」の原稿の一部を修正。
- 「編集部注」の掲載は原稿と引き換え
編集者I氏が「編集部注」の掲載拒否を竹内薫氏に伝えると、出版直前に原稿使用を拒否。出版を実現させるために、やむを得ず初版に関しては竹内氏が捏造した「編集部注」をオリジナルのプロフィールと差し替えて対応。
- 「相対論を打ち砕くシルバーハンマー」の公表が台無しに
「相対論を打ち砕くシルバーハンマー」は今でも反証されていない。確実に日本の科学がリードできる情報を含んでいた論考は竹内氏の「編集部注」により検証するまでもなく誤りが確認されているかのような扱いを受ける。
- 共著者を疑似科学扱い
『「相対論」はやはり間違っていた』が出版後に批判されはじめると、自らの誌面を削除して提供した共著者への謝意もなく、出版自体を疑似科学と切り捨てている。
- 竹内氏が書籍で疑似科学の被害者を公言しはじめる
竹内氏が疑似科学の被害に遭ったと公言し、苦難から脱却した「科学応援団」として売り込みはじめる。スキャンダル話に共感する支持者も現れるが、矛盾や歯切れの悪さから捏造疑惑が絶えない。
- 学界から追放された?のは本人の態度
竹内薫氏の論考に「学界のお歴々も、勲章もらってふんぞりかえっていないで、少しは、時代遅れになってしまった日本の学問機構の改革に着手したらいかがであろう。」と書いているように、海外から帰って来た時点で、すでに日本の物理学界を馬鹿にしきっていた。。
- 出版の仕事が来なくなったのは本人が原因
仕事を紹介され、共著者の協力で出版できたにもかかわらず、他の著作の削除を要求し、出版中止までちらつかせる「大物物理学者」に執筆の依頼をする出版社がなかったというだけ。
- 科学倫理を語っているが・・・
STAP細胞の一件ではNHKで小保方さんを「科学倫理を学ぶ機会がなかった」と批判していたが・・・。
- 原発の安全性を語っているが・・・
原発事故の際に「構造上メルトダウンは起きない」と危険性を警告する他の解説者を無知だと批判していたが・・・。
- 茂木健一郎氏は竹内薫氏のスキャンダルがウソだと知っている
親友の茂木氏が出版までの真相を知らなかったとは考えにくい。また、この直後に竹内氏と徳間書店の同じ編集者I氏で共著を出していることから、飲み屋で「おまえ終わったな」と語ったのは深刻な意味がなく冗談だったと分かる。
結局のところ、海外から帰国した竹内氏は「科学倫理を学ぶ機会がなかった」ために、紹介してもらった出版者や共著者をうまく利用してわがままを通しますが、出版物が批判にさらされると一転して、知らないうちに掲載された哀れな子羊を演じるようになります。それを信じた人々が科学への姿勢に賛同してたびたびメディアにも出演するようになりました。
一番の問題は、「科学倫理を学ぶ機会がなかった」人物が日本の科学や教育の現場で適当な発言をしている現状が把握されていないことです。科学とは何かを根本から考えるには、自然を観察して議論や対話をしなければ、今日のように単なる学派間の派閥争いに終始しまうことになります。
科学に必要なもの、不要なものを見極めて発言している科学者を自然に選抜できるよう、メディア側も科学について十分学んでおく必要があるでしょう。