相対論的計算はムチャクチャ
少し前までドライブはというと、地図を見ながらあっちへクネクネこっちへクネクネ、道に迷ってやっと目的地に着いた時にはもうヘトヘト、なんてお父さんも多かったんじゃない。最近はどこへ行くにもカーナビ無しなんて考えられない。なにしろ楽だからね。これも計測技術が進歩したおかげで、カーナビを開発した技術者には感謝しなくちゃね。
「開発者がいくら努力したところでアインシュタイン先生の相対論を使った補正をしなければ,とても使えた代物ではない。少数の優秀な学者だけが相対論的補正のおかげで目的地まで到着できていることを認識しているが、一般人も先生に感謝するべきだ」
エーッ カーナビの精度と相対論は直接関係ないよね? たった時速100km前後で走る車が相対論的ホセーをしないと目的地にも到着できないなんて、おかしな話だね。カーナビ以外でも正確な位置を知る方法はいくらでもあるし、日常生活とかけ離れた理論の出る幕はないんじゃない?
「凡人の頭ではその程度の考えだろう。だが、GPSに使用されている人工衛星は速度や重力が地上とは大きく異なり、特殊相対論や一般相対論の影響を無視してはもはや運用は不可能になる。まず特殊相対論的効果では時計が遅れ、一般相対論的効果で進む。この二つの効果を考慮した結果、時計はわずかに早く進むことになる。
そこであらかじめ人工衛星に搭載されている原子時計はゆっくり進むよう補正してある。世界中のカーナビシステムが正常に動作しているということが相対論の正しさを証明しているのだ」
相対論的補正をしてるのが事実はいいとして、いったいどれだけの割合で時間を補正してるのかな?
「地球の時間の進みに対して45億分の1だけ進む。いや、100億分の4。いや待てよ、10億分の4。やはり・・・」
やっぱり、そんなにわずかでアバウト補正じゃ距離の違いを実感できないような気がするよ。本当に無視できないほど大きくなる場合があるの?
「すでに補正してある状態だということを忘れてもらっては困る。仮に相対論的補正をせずに1日放置したら11Kmも誤差が出ることになる。これほど不正確なカーナビを使ってドライブしたら海の中まで走ることになり、とても危険で使い物にならん」
なるほど確かにボンベを背負って車の運転は大変そう。乗ってからしょうか、しょってから乗るか・・・。じゃなくて、たった何億分の1の補正で「とても使い物にならないカーナビ」が「とても使い物になるカーナビ」に昇格してるという話はどこか不自然だってこと。
となり、補正をしなかったカーナビは約11kmの誤差が出てしまうということだ。カーナビが正確だといことは皆が認める事実だから、この事実を聞かされると相対論を疑う一般人でさえ感心して黙ってしまう。」
スゴイ! わずかな補正を無視すると「とても使い物にならないカーナビ」になってしまうということもあるんだね。1日で11kmということは、誤差が出る割合が分かっていればなんとか使えそう。つまり「とても使い物にならないシステム」と「とても使い物になっているカーナビ」が共通して測定している正しい距離がわかっていれば、だいたいの位置はわかるよね。ついでにその距離も教えてほしいな。
となる」
ウヒャーッ、もっとスゴイことになちゃった! よーく見て。カーナビって、地球上の車の位置を割り出すために、丸1日かけて宇宙の彼方まで電波を飛ばしてるとてもタイヘンなシステムだった? キョージュの計算だと、相対論で補正した場合でも「とても使い物にならないカーナビ」のシステム自体はそのまま変更されないんだけど・・・? そんなおかしなカーナビ誰が使ってるのかな?
「まて! こんな数字は初めて見る。どこかで計算間違いしたようだ・・・」
計算は合ってるし、数値から逆算すると、どうしても巨大なシステムになるよ。どうやら、人工衛星の速度と光速度を間違えて計算したみたいだね。
現実のカーナビで11Kmの誤差を修正してると聞かされていたからみんなが関心してたのに、キョージュの計算間違いが話の発端だったってこと? もともと相対論的補正で誤差を大きく見積もらないと、とても証拠にならない話だったんだね。
こんなカーナビシステムはイヤだ!
カーナビを補正しないとどのくらい誤差が出るのか、誰もきちんと計算しないで「相対論で修正しなければGPSは使い物にならない」、大学キョージュの間違った説明を自慢げに紹介したりしてる。思い込みって恐ろしいね。
だいたい、カーナビは電波の進んだ時間から直接距離を割り出してなんかいない。位置情報を電波で送ってるだけだよ。だから、時計の時刻がずれていると、その間に人工衛星が移動する距離と同じだけ位置情報もズレル。補正した38マイクロ秒の間に進むのは電波ではなくて人工衛星ということ。これだけで誤差の計算値が10万分の1に減る。
そういった点に着目すると、相対論ではずいぶんおかしなカーナビシステムを想定していたことになる。本質的な検証とは関係ないけど、ついでだから紹介しておこう。
- 宇宙の彼方から電波を受信している
- 200年前に人工衛星を打ち上げないと間に合わない
- 異星人が関係している・・・らしい
- わざわざ誤差を累積している
- 人工衛星を1つしか使っていない
- 電波の進んだ距離を測っている
- 相対論の適用が間違っている
- 検証に使ったシステムは実在しない
相対論的効果を証明するには、現在運用されているカーナビから相対論的補正を除いた結果を計算する必要がある。しかし、検証に使われたシステムは相対論の専門家が誤差が最大になるよう原理や条件を都合よく変えてしまった架空のシステム。実際に運用されているシステムで検証しなければ比較にならない。このシステムに相対論的補正を適用しても、正確に作動している既存のシステムになるわけではない。 - 誤差を1日分足し合わせている
1日放置した時の誤差を話題にしているが、実際の衛星は1日に数回以上時刻の修正がされているという。既存のシステムと同じ頻度で時刻の修正をすればそのつど誤差がクリアされるので、1日分の誤差をわざわざ累積して最大になるようなサンプルの取り方をするカーナビを設計している技術者はいないだろう。 - 時刻のズレと光速度を掛けている
相対論的補正をしなかった場合、時刻が10億分の4秒ずれ、誤差を放っておくとカーナビは1日に約11Kmの誤差が出るというが、衛星の時刻のずれが直接影響するのは発信時の衛星の座標。仮に時刻のずれが1秒累積したとしても、それぞれの衛星の位置が3Kmほど誤認されるに留まる。相対論で主張されているようにマイクロ秒程度の差が11Kmに達することは考えられない。これは単純に衛星の速度と光速度を取り違えて計算しているため。 - 衛星間の時刻のズレが出てこない
カーナビは衛星からの時刻の信号差で相対的に受信機の座標と時間を割り出している。すべての衛星が同じ進み方をしている時計を搭載してほぼ同じ距離の場合、時間差はほぼ0。時刻が同期されていればたとえ時刻を1時間修正しようと、到達時間が変化することはない。衛星間の時刻のズレに言及しなければ補正の効果が得られないが、相対論の説明では、補正した場合としない場合、あるいは衛星の時刻と受信機の時刻の差のように運用時にはあり得ない組み合わせで比較をして、その差を作り出している。 - 相対論的補正が必要な時間はわずか
それぞれの衛星から出た電波が受信機に届くまでのごく短い時間に相対論的補正の影響が出る。仮に10分の1秒程度で地上に届き、それぞれの時刻差も10分の1秒前後なら、相対論的効果は約100億分の4秒。受信機の座標計算はその間に衛星が移動する距離分だけ不正確となる。ただし、その値は1cm以下となり、「とても使い物にならない」という表現には無理がある。 - 相対論的補正でなくても修正可能
相対論は古典物理学と実験値との差を埋める係数を流用して作られた理論。他の理論でも予想される修正値を相対論上で実行したというだけの話。実際に時間が収縮したのではなく、古典物理学的に原子時計が狂っていた場合でも同様の修正が必要になる。ただし、どちらの修正も通常の使用に影響はない。